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アジールのような場。

 「教職学院」は、教育学を学び、教師を育てる小さな学校です。

 フランス現代思想がご専門の内田樹さんのご著書の中に、次のような一節があります。

 ぼくは自分の道場をある種のアジールにしたいと考えているんです。道場って広いところに畳が敷いてあるから、家出したやつとか、食えないやつと か、けっこう置けるじゃないですか。「寝袋貸してあげるから、そこに寝なさい」って。それで朝6時に起きて道場の掃除して、子どもクラスの指導して……そ ういう書生みたいな内弟子が入れ替わり立ち替わり出たり入ったり道場で暮らしている。『姿三四郎』で三四郎がごろごろ暮らしている講道館道場みたいな、そ ういう私塾のようなアジールのようなものがあったらいいなと思っているんです。(略)そこにいる間に何らかの技芸が身につくような授産施設の側面があれ ば、なおいいですよね。(内田樹・春日武彦、2005『健全な肉体に狂気は宿る――生きづらさの正体』角川書店、217頁)

 教育学を教えてきて、教育学を学びたい、教師になりたいという学生さんの強い思いに日々接してきました。そういった学生さんを何人も大 学・大学院に送り出してきました。しかし残念なことに、少なくない学生さんが、大学・大学院での教育に失望し、私のところに相談にやってきます。もちろ ん、彼らの例をもってして、今の高等教育機関がうまくいっていないと断言するつもりはありません。ただ、私の周りにいる、学びたいと思っている方々の気持 ちを大切にしたいと思うのです。
 教育学を学びたい、教師になりたいという夢を抱きつつも、困難を抱えているのは彼らだけではありませ ん。様々な事情で教育学部に進学できなかった方々もたくさんいます。教育学部に限らず、高等教育へアクセスすることができない方も少なくありません。一旦 社会に出てから、改めて学びたいと思った方もいます。
 学びたいという強い希望を持ちながらも、自分一人ではうまくいかない、そういった方をサポートしようと始めた学校が、この「教職学院」です。
 私にできることはそれほど多くはありません。これまでやってきた、教育学を教えること、そして、その教育学の実践の場で子どもたちを教えること。それを、アジールのような場所で、微力ながら取り組んでいきたいと思うのです。
 「私塾のようなアジールのような」この場所で、ここにいる間に教師としての力量を身につけていく。教育学を学ぶ学生たちは、日常的に子どもたちとかかわり、子どものクラスを指導する。子どもたちも日常的に、異年齢の人たちとコミュニケイトし、総合的に学んでいく。
 そんな場所にしていきたいと思っています。

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